医食同源を楽しむ〜共食共笑と口福の日々雑感〜 (2)
口福とは、食べたときに口の中が満たされる“幸せ”を指す言葉です。そんな小さな発見や感謝の気持ちを起点に、この連載では食にまつわるエピソードを気楽にお届けします。
監修:北野 克宣(医療法人 菅井内科 理事長・院長)
日本料理コメント:大下 光 氏(お料理 良福 店主
第2回「本当に疲労を回復させる食事」
みなさんはこう聞いて、ニンニクやうなぎ、エナジードリンク(食事とは言えませんが)を想像されるかもしれません。でも実は、疲労には2つの意味合いが含まれています。
1つ目は、「あー、疲れたぁ!!」という“疲労感”です。一般的には、この“疲労感”が消えることを「疲れがとれた」と錯覚しています。ところが近年、“疲労感の解消が必ずしも疲労の回復を意味しない” ことが近藤一博先生(東京慈恵医科大学 疲労医学講座)の研究によって判明しました。
疲労の2つ目の意味合いは、疲労の本質が <疲労因子の蓄積による新陳代謝の低下> にあるという点です。さらに疲労因子を分解する <疲労回復因子> を増やす成分の同定に加え、それらを豊富に含む食材例も公表されました。ここではその一部をご紹介します。
- γ-オリザノール:玄米(米糠の部分)に含まれる成分
- ケルセチン:玉ねぎ、りんご、ブロッコリーなどに多く含まれる成分
- ポリアミン類(スペルミン、スペルミジンなど):納豆、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品に多く含まれる成分
- アンセリン:鶏の胸肉や鮭、マグロ、カツオなどに多く含まれる成分
- β-アラニン:アンセリンやカルノシンの分解で生じる成分
ただし、ここで大事なことを申し添えておかねばなりません。これらの食材が疲労回復効果を発揮するには十分な量のビタミンB1が必要です。ビタミンB1は糖質やアルコールの代謝で大量に消費されてしまいますので、くれぐれも摂りすぎには注意しましょう。
日本料理 店主より
今回は疲労回復食材を使ったレシピを2品ご紹介します。
玄米とひじきの和風リゾット
以前、北野先生に教えて頂いた、金芽ろうカット玄米をリゾットにしてみました。
リゾットは、イタリア発祥の料理ですが、今回は疲労回復について玄米とチーズ、豆類製品である味噌を加えて、元気の出る献立にして見ました。

材料(2人前目安)
・玉葱… 1/2個
・うるち米…50g
・玄米…150g
・乾燥ひじき… 大さじ1
・昆布出汁 … 600cc
・サラダ油 … 適量
・麦味噌又は米味噌… 大さじ2
・酒… 少々
・パルメザンチーズ… 適量
作り方
① 玉葱は皮をむきみじん切り、ひじきは水で戻す
② うるち米/玄米を1時間程度水に漬けた後水切り
③ 油で①をさっと炒め取り出す。フライパンにもう一度油をひき②をさっと炒め、昆布出汁を数回に分けて入れて炒め煮
④ 完全に水分がなくならないよう昆布出汁を入れ、味噌・酒・パルメザンチーズで味付けし、玉葱・ひじき加えて少し芯を残して火を止め、器に盛り青ネギを散らす
良福のチキン南蛮
チキン南蛮は、揚げた鶏肉に甘酢をかけ、タルタルソースを添えて食べる、宮崎県の郷土料理です。
今回、私はこのチキン南蛮の定義を自分なりに解釈し、アレンジして作ってみました。
料理の世界にも「南蛮料理」という言葉があります。代表的なのは、唐辛子を入れた甘酢で漬け込む「南蛮漬け」です。
この「南蛮」とは、室町末期から江戸時代にかけて行われた南蛮貿易を通して、日本に入ってきた食材や文化のことを指します。有名な話として、天婦羅も南蛮料理と言われています。食材を揚げるという行為が、この南蛮貿易によって伝わったと言われており、炒めるという行為も同様に伝わったとされます。
今回のチキン南蛮では、「炒める」という要素と、ヨーグルトや味噌を使った健康的なタルタルソースを組み合わせてみました。

材料(目安)
・鶏むね肉…1枚
・ズッキーニ…1/2本
・トマト…1個
・ピーマン…1個
・ナス…1/2本
・塩こしょう、片栗粉、サラダ油…適量
南蛮からめタレ
・水、酒、薄口醤油、砂糖…各大さじ1
ヨーグルトタルタル
・プレーンヨーグルト…100g
・酢、白みそ…各大さじ1
・粒マスタード、砂糖…各小さじ1
・うずら玉子水煮…3個
・玉葱みじん…50g
作り方
① むね肉を1口大に切り、塩こしょう・片栗粉をうすくまぶす。
② ズッキーニ・ナスは1cm幅の輪切り、トマトは一口大、ピーマンは種を除き乱切り
③ サラダ油を引いたフライパンでむね肉を中火で炒め、肉に火が通ったらトマト以外の野菜を加え炒める。具材に火が通ったら南蛮からめタレとトマトを加えてさっとからめて火を止める
④ タルタルの調味料を電子レンジで1分加熱後、うずら玉子・玉ねぎを混ぜる
⑤ 炒めた南蛮を盛り、ヨーグルトタルタルをかけて完成

旬の食材を吟味し、心を込めたおもてなしと心地良い空間「お料理 良福 」(松山市三番町)店主
https://oryouri-ryohuku.com/
医食同源メモ
その後の研究から疲労因子の蓄積がうつ病の発症や心臓突然死を招くことが判明しており、これらはまさに過労死の2大要因です。
疲労感の正体は <疲労因子により作られた炎症物質が脳に生じさせている現象> ですが、うなぎやニンニク、エナジードリンクなどに含まれる抗酸化物質はこの炎症物質の生成を抑えることで疲労を感じにくくさせます。
そして仕事や人間関係の悩みなどでも分泌されるストレスホルモンには非常に強力な抗酸化作用があります。疲労感の緩和が全て悪いわけではないですが、疲れを感じにくいからと適切な休養も取らずに無理をすれば、限度を超えて疲労因子が蓄積しかねません。まるで、ケガを押してでも試合に出ようと、無理をして痛み止めを使う状況に似ていますね。“疲れ知らずで無理ができてしまうこと” こそが、本人も気付かぬまま最悪は “過労死” にまでつながる侵入禁止の危険コースなのです。
疲労物質や疲労回復因子を外来で直接計測する手段はまだないため、当院では次善の策である心拍変動解析を用いて疲労度を総合的に評価しています。ですが、そもそも疲労を溜め込まないために、本当に疲労を回復させうる食材を様々に組み合わせた健幸食のレパートリーを増やしてみてはいかがでしょうか。
関連リンク
リカバリー外来コラム:2025年1月17日号、2025年6月6日号
健康マスターコラム:第5回、第11回、最終回
