医食同源を楽しむ〜共食共笑と口福の日々雑感〜 (3)
口福とは、食べたときに口の中が満たされる“幸せ”を指す言葉です。そんな小さな発見や感謝の気持ちを起点に、この連載では食にまつわるエピソードを気楽にお届けします。
監修:北野 克宣(医療法人 菅井内科 理事長・院長)
日本料理コメント:大下 光 氏(お料理 良福 店主
第3回「日本料理の基本(五法・五味・五色)」
みなさん、2013年12月に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことをご存知でしょうか?
日本料理は、五法・五味・五色によって構成されています。これは四季折々の旬の食材を使い、自然との調和を重んじる日本料理の根幹となる大切な考え方です。
五法とは、切る(生食)、蒸す、煮る、焼く、揚げるという基本の調理法で、日本料理の技術の中心となるものです。
五味とは、酸味、苦味、甘味、塩味、うま味を指します。辛味を加えた六味もあります。
五色とは白、黒、黄、赤、青(緑)で、料理を盛る器の色、料理に添えるあしらいや花など、献立の演出を考えるうえで欠かせないものです。
まさに日本料理とは、五感の全てを使って堪能するものなのですね!!そこに店主からお料理にまつわる色々なお話を伺うと、お食事がさらに美味しく感じるから不思議ですね(笑)
日本料理 店主より
五味、五色、五法の考え方は、古代中国発祥の陰陽五行説からの思想に強く影響されているとされています。日本には、奈良時代から平安時代に仏教と共に、この陰陽五行説がつわったとされているそうです。
ちなみに、五味五色五法を大きく取り入れた精進料理は、鎌倉時代に中国から伝わったのが元とされています。
その後、室町時代の本膳料理から安土桃山時代の、茶の湯文化の発展と共に懐石料理へと引き継がれ、現代の日本料理の原則として受け継がれています。


本膳料理とは、武士の礼法から始まり日本料理の基本となる料理形式とされています。
食事をとると言う行為自体に、儀式的な意味合いを持たせるため献立や食べ方、服装など細かく決まっていたそうです。
五味五色五法の考え方は、長い年月をかけて完成されたものと言えます。

旬の食材を吟味し、心を込めたおもてなしと心地良い空間「お料理 良福 」(松山市三番町)店主
https://oryouri-ryohuku.com/
医食同源メモ
老化を促進するAGEsの発生をできるだけ抑える調理法は、次の順番です。
【AGEsが少ない】
🥗 生で食べる(切るだけ)
↓
♨️ 蒸す
↓
🍲 煮る
↓
🍳 炒める※
※「揚げる」には古来より鍋を用いますが、フライパンが日本に入って来たのは明治になってからのため、五法に「炒める」は含まれていないのだそうです。
↓
🔥 焼く
↓
🍤 揚げる
【AGEsが多い】
時代とともに変わる日本人の食事と健康との関係を調べた報告があります。1960年・1975年・1990年・2005年と15年ごと異なる年代の日本人家庭1週間分の食生活の内容を比較再現し、それぞれの内容を凍結乾燥後に8ヶ月にわたりマウスに与えて経過を観察した結果、1975年の日本食で最もストレスの軽減と運動能力の増加を認めました(薬学雑誌135(1)57-65,2015)。
1975年の日本食の特徴として、大豆・魚・野菜・きのこ・果物を中心に、いろいろ少しずつ、生食・蒸す・煮る調理法で、砂糖・塩分控えめに出汁(だし)と発酵食品を交えた「一汁三菜」が基本で、これらはビタミン、ミネラル、そして何より食物繊維が非常に豊富でした。

そして、和食の摂取頻度が多いほど死亡率が低下するという報告があります(BMJ 2016 352 i1209)。8万人の日本人を対象とした15年間のコホート研究で、和食の摂取頻度が多いほど総死亡率、心血管疾患による死亡率ともに低下しました。
それでは最近の日本人の食事はどうでしょう?食事由来の温室効果ガス排出量が小さく、かつ栄養学的にも適切なものとなる、最適化された食品の摂取パターンを計算し、日本人396名4日間の食事記録から現在日本で摂取されている食品との乖離を検証した研究(Br J Nutr.13;1-44, 2022)では、男女共に清涼飲料、アルコール、赤肉類・加工肉、調味料類、砂糖・菓子類が過剰となっており、逆に全粒穀類の摂取量が圧倒的に不足していました。
この結果からも、上述した1975年の日本食を目安に日々の食事内容を組み立ててみてはいかがでしょうか?その際はぜひ、五法、五味、五色を意識してみてください。
